おっさん's だいありー

主にバイクのこととか、ランニングのこととか、Jリーグ・FC東京のこととか

病院へ行こう!その1

・・・朝のクソ忙しいときになぜにこんな大通りの真中で昼寝しとんねん・・・


 ・・・あぁ、それにしても今日は良い天気だよな~・・・


 などと悠長なことを言っている場合ではなかった。いっそ頭でもどこかに打ち付けて気絶していた方がよっぽど楽だったことか・・・。

 あぁ、なんてこったい。やっちまった・・・

 それと同時に自分の身体を襲うそれはこの世のものとは思えない大激痛に七転八倒、唸り声を上げ、のたうちまわり、もがき苦しんでいた。



 そう、時は朝の通勤時間帯
 オレはその日もバイク通勤だった。AM7時に家を出て東京は環七通りをひたすら南下する一本道。約1時間ほどの道程。数ヶ月もの間の通いなれた道。
 その日もいつも通りの出勤途上であった。

 某高円寺のJR高架下での信号待ち。
 当時の愛車はSUZUKI GSXR750RR。連日キャブレターのセットアップに余念がなかった。毎日仕事から帰るとすぐさまバラし、キャブのジェット調整をする日々。勤務先への行き帰りが言わばテスト走行も兼ねているというもの。そんな相変わらずのバイク三昧な毎日の中での、その日その時それは起こった。


 シグナル・ブルー☆

 1速で思いっきり加速する。

 レッドまで引っ張り2速、恐らく3速まで移行。

 前方に2台の車。
 左がブルーのエルフ(2トントラック)、右が普通の乗用車。若干右の乗用車が先行してた。

 よし、右の乗用車の後ろから左のエルフの前へ擦り抜けていこう。

 右手のアクセルは緩まない。

 前方それら車群が間近に迫る。

 丁度、高円寺陸橋に差し掛かる。

 よし、抜けるぞ!

 ・・・と、思った瞬間、それら2台が並走してしまった。

 やばい!?...フロントブレーキをクイっとやった瞬間、フロントからスリップダウン
 そのまま路上に投げ出されたオレ・・・

 しかも、そのエルフ(2トントラック)の前方へ・・・。

 バイクは左側に倒れ、火花を散らしながら路面を遥か向こうに滑り行く。

 それを見届けて、振り返ったそこには・・・







 迫り来るエルフの不気味なブルーのバンパーが・・・あった・・・。







 あとは何がどうなったのかわからない。
 ただ、全ての事が終わった後、オレの身体の猛烈な変化に大体の察しはついた・・・。
 そう、何がどうなったのかはわからない。ただはっきりしている事は、自分の左足内側の”くるぶし”がなくなり、ぽっかりと穴が空いているようだ。削り取られたようだった。その左足首から下は見るからに血の気がひいていて真っ青というよりは真っ白だった。まるで自分の足ではないような気がした。
 猛烈なまさに生き地獄のような激痛がオレを襲う。エルフに「踏まれた」左足首という局部的な激痛というよりも、自身の下半身全体を襲う重~い鈍痛といった感じであった。
 辺り構わず叫びまくり、地を叩き、転がりまわり・・・とにかくそうやって激しく動いていないと痛みに負けてしまいそうだった。

 「痛みを伴う構造改革」?!
 そんなもん屁でもないくらいの、まさに生きるか死ぬかの純粋無垢な「痛み」だっ。・・・なに言ってるのやら・・・


 痛みが少し和らいだの見計らって左足と足首を恐る恐る動かしてみる。

 ・・・動く・・・

 どうやら骨は折れていないようだ。

 ちなみに、高円寺陸橋のほとんど目の前が消防署。ほどなくして救急車が到着した。おまけに転倒滑走していったGSXRはタンクからのガソリンとオイルが漏れていた為に消防車まで出動させてしまった。そして愛車GSXR号は・・・
 後に引き上げてくれたバイク屋の話...

 「結構スピード出てたでしょう?オマケにアンダーカウル外してあったから左側のクランクケースがほとんど削れて風穴空いてたよ。削りカスやらなにやらがエンジン内に入り込んでいて直すのはかなり手間だね。諦めた方がいいと思うよ。」

・・・という、ありがた~いお言葉を頂戴した。そして事故後愛車がどのような姿になったのか確認できないまま、さよならをした。

合掌 (-人-;)


 さて、救急車に乗せられ、やはり救急隊員もオレの怪我の状態を見て判断したのだろう「大きい病院へ連れていってあげるね」と言ってくれた。すぐ目の前には救急指定ではあるもののなんだか寂れた病院があったのだがそのままスルー(助)。
 朝のクソ忙しい中、渋滞を掻き分け掻き分け突き進む救急車。申し訳ないやら痛いやら、そして自分のやっちまった事の重大さに頭の中は暗黒大星雲(意味不明)。
 青梅街道を新宿方面へしばらく走った、場所は西新宿。周りを副都心のビルで囲まれたようなところ。
 某医大付属病院。
 そのまま救命救急へ担ぎ込まれ処置室へ・・・。
 ストレッチャーに乗せられ運ばれていくオレ。朝早くだというのにもうたくさんの患者でごった返している。さすが大病院。その中を掻き分け掻き分けドナドナのオレ。恥ずかしいやらなにやら・・・

 処置室の中。
 先生二人で怪我の状況を分析している。
 ボソボソと話し合っている先生。


 「あらら~、見事に風穴空いてるね~。ほ~ら、指が奥まで入っちゃうよ~」

 「あぁ…、せんせぇ…そんな…やさしくしてね。私初めてなの(はぁと)・・・」

・・・なんて冗談言ってる場合ではないって。これから一体ナニをどうされるのかと思うと緊張で顔がカキコキコキ...。だから病院というか医者は嫌いなんだよ!自分がまるでモルモットにでもなった気分だ。オレの命は図らずも今目の前にいる二人の先生の手のひらの上でコロコロと転がされているようなものなのだ。
 (‥)(: )(¨)( :)(‥)))))コロコロリン…

 「まずは消毒をしよう。ちょ~っとシミるけど我慢してね~」

 ドボドボドボ・・・・・

 ペットボトルサイズの消毒液の入った瓶を片手に、オレの足元へと近づいたかと思ったらいきなりそれをオレの風穴の空いた左足首にぶっかけ始めた。

 「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」・・・室内に轟く悲鳴。苦痛に歪む顔。


 「やっぱ麻酔打とう...」


 だったら最初から打てよー!

 傷口の周りに5,6発打たれた麻酔のおかげで痛みはなくなったが、それでも嫌なものである。傷口に消毒液をぶっ掛けながらジャバジャバとしつこいぐらいに洗っている、指を中に入れながら・・・。その間もボソボソと先生は話している。

 「あらまぁ、こんな奥にまで路上の小石が入りこんでるわ...」

 「ん~…これどうやって縫い合わせようかねぇ・・・。なくなっちゃってるからなぁ。」

 「じゃぁ、ここからこうやって引っ張ってきて、こっちからもこうやって・・・と」

 寝ているオレにはなにが一体どうなっていることやら・・・どうしようもなく不安だったりする。一体オレの足ってばどんなんなっちゃったの?!先生、そんなにオレを弄ばないでね。やさしくしてね(はぁと)...まだ言うか。

 ♪か~さんは 夜なべ~をして~♪
 縫い合わせもどうやら終わった。どうやって縫い合わせたのかは、今現在も生々しく残っているその傷跡を見ると、三方からそれぞれを引っ張ってきて縫っている為、丁度傷跡は「Y字」になっている・・・。

 自分はてっきりその日は帰れるものだと思っていた。お泊りすることなんて毛頭考えていなかった。ただその時の先生が言うのには・・・

 「風穴空いた中にかなりの石ころやらゴミが入っていたので下手すると感染症を引き起こす危険性がある事と、ポッカリ空いた箇所の縫合だけでなく、その周りの皮膚がかなりの範囲で剥がれてしまっている為に、その部分も心配だ。」...というようなものであった。

 ガビ~~~~ン

 どうやら左内側”くるぶし”のみならず、そのくるぶしから下の内側はほとんどズルムケ状態らしい・・・。

そして。。。
 「ということで、ほんの2、3日様子見でゆっくりしていきなさいな。」

 サァーっと血の気がひいていくオレ。
 それでも「たった2、3日我慢すればすぐに帰れる!」と頑なに信じてしまったオレ・・・。
 そう、まさか・・・後にあんなことになろうとは・・・
 季節は丁度秋。10月下旬のことだった・・・


 ストレッチャーに乗ったまま待つことしばし。すると病棟の看護婦さんが迎えにやってきた。
 そしてまた長い廊下をドナドナされていき、エレベーターへ載せられ14Fの病棟へまっしぐら。
 病室が近づくにつれてすっかり心身ともに入院患者になりきっているオレ・・・。

 こうなったらどうにでもしてくれぇー!

 すっかり気分は”まな板の鯉”であった。




 そして忘れてならない、その日は丁度・・・












 ・・・自身、♪25歳の誕生日...イヴ♪・・・












 ・・・あぁ無情・・・












つづく




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