おっさん's だいありー

主にバイクのこととか、ランニングのこととか、Jリーグ・FC東京のこととか

病院へ行こう!その4

 ・・・・・・憂鬱だ・・・・・とことん憂鬱だ・・・・・

 ・・・あ、そろそろ午前10時だ・・・(-_-;)




 ・・・カラカラカラ・・・
 は~い、回診ですよ~



 ふんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ



 今日もまた、この「午前10時」に恐れおののき、その時間が近づくにつれ気分がどどぉ~んと重くなっていく。これさえなければとても快適な入院生活となろうものを・・・。
 相変わらず先生の容赦ない攻撃は続いている。
 状態としてはただでさえ傷口に直に触られるだけで飛び上がるほどの痛みがあるところにもってきて、消毒液を浸した脱脂綿でぐりぐりやられるわけである。
 考えてもみてほしい。足首周辺、皮膚が”ズルムケ”のところにだ。
 ん~、これはやはり「拷問」以外のなにものでもないと固く信じる。
 そして.....やはりあの先生は「S」に違いないと固く信じる。・・・ま~だ言うか!

 確かにこの「拷問」さえなければ、あとは至って快適...もとい「暇」。
 だって寝てるしかないのだから・・・。

 初めての入院生活。そしてまだまだ事故による傷心からナーバスになっている自分。気分は常にダークグレーであった。
 唯一の救いであり、心の支えであったのは、その当時付き合っていた彼女のお見舞いだったろう。
 事故った翌日。恐らく驚いて飛んでくるだろうな、と思っていたら案の定訪れてきた。オレの母親には例の「大した事はない」というように聞いて来たらしいのだが、オレの思いのほかの「重装備」にかなり驚いたみたいだ。

 ちなみにその当時、今は既に開通している「都営地下鉄大江戸線」などは影も形もない。新宿駅西口から遥々歩くと、ゆうに片道20~30分はあろう距離をほとんど毎日訪れてきた。
 薄情なもので、うちの家族連が1,2週間に1回程度しか来てくれないところを、毎日そんな大変な思いまでして献身的に見舞いに来てくれる彼女。

 ただ、ある時ふと思った・・・。

 最初のうちは手放しで、ただただありがたや、ありがたやと何の疑いもなく感謝していたのだが・・・な~んとなく、どうもそればかりではないような気がしてならなかった。もしや、それはお見舞いだけが目的ではないのでは?と、いつしか思うようになっていった・・・。それについては、また後程お話しよう。


 さて、そんなオレの暗雲垂れ込めていた病院生活にもある種の転機が訪れた。それは、今まで入っていた4人部屋から6人部屋に移ることになったのだ。
 自分自身の不慣れな入院生活初体験という暗い気持ちと、シリアスな症状の同室の人の存在もあったと思うのだが、どうにも部屋の雰囲気が暗くて重苦く感じていたのだった。

 またしても、ドナドナされていくオレ。またまたどうなっちゃうんだろう~
 ・・・もう好きにしてくれー!半ば焼けクソ状態なオレ。

 そしてその6人部屋へお引越し。
 真中に通路を挟んで、両サイドに3つづつのベッドが並んでいる。
 オレは右サイドの一番廊下側に入った。
 さっと見渡すと、どうやらおじさまばっかりのようだ。
 おっと、一番奥の方にオレと同年代の兄ちゃんが一人いた。
 なんだか部屋に入った瞬間の雰囲気がとても明るく感じた。
 もしかしたらここはとても楽しいところかもしれない、なんとなくそう思った。

 オレの隣は30代後半から40初頭のおじさん。室井さんと言う。髪の毛は五分刈りで口髭を生やし、一見ちょっと強面(こわもて)なのだが、オレがその6人部屋入室後真っ先に声を掛けてきてくれた実はとても気さくな人であった。とてもエネルギッシュでとても愉快な人であった。言わばその6人部屋のムードメーカー的な存在といったところだろうか。

 そんな室井さんの症状は「大腿骨骨頭壊死」であった。今回の入院は骨頭部の手術をする為。症状は両足に発生し、片足は壊死した骨頭部を切断しそこに金属の”人口骨頭”を継ぎ足しし本来の関節の働きをさせようというもの。もう片足の方はまだ完全壊死には至っていなかったので、若干発症している骨頭部を切断し、そのままくるっと回転させ、使える部分を関節部に向けて再びジョイントするという「回転骨切り」という方法を取ったそうだ。やはり人口骨頭にすると耐用年数により何年かすると再び入れ替えなければならないそうだ。既存のもので使えるようなら自然のものがやはり一番いいらしい・・・
 普通の生活を送っている中で、何やら足の付け根が痛くなってきて、片方の足が痛くなるともう片方の足でかばって・・・そうこうしているうちに両足ともどうしようもなく痛くなり、掛かり付けの医者の紹介を受けここの大学病院で診てもらった結果がそういうことになっていたそうだ。オレとしては話を聞きながら、へぇ~、そんな病気もあるんだぁ・・・。初めて知った次第であった。
 で、この室井さん、術後間もないらしく、当然の事ながら寝たきりの動いちゃダメよ状態であった事は言うまでもない。

 さてその隣で窓際は、これまた室井さんと同じ症状により入院している佐藤さん。
 この人は50歳くらいであろうか。細身のおじさん。採血を腕の血管からは取れないらしく仕舞いには足の甲に注射針をぶっ刺されていたっけ。痛そう・・・。
 で、この人もベッド上での動いちゃダメよ宣言者。

 その佐藤さんの向いの窓際は、オレと同年代の遠藤さん。体つきはがっちりとしていて実に重そうであった。
 そんな彼の仕事は建築現場の監督さんで、その現場での作業中にハシゴからその実に重そうな身体で落ちて、腰だか骨盤をやっちまったらしい。ありゃぁ物凄い衝撃であったことだろう。手術はしたのかどうかはわからないが、ベッド上で両足かかと部に穴を空け、そこに重りの付いたワイヤーを通し、牽引されていた。これまた痛そう・・・。
 とまぁ、またまたこの人も寝たきり~・・・
 そうそう、この遠藤さんには彼女がいて、どうやらその彼女の職場がこの病院の近くらしく、昼時になると必ず昼飯を一緒に食べに訪れてくる。小柄で華奢な彼女で、掛けているメガネのせいか”アラレちゃん”に似ている・・・。
 そして思った。そのmore献身的姿はオレ以上の「マンツーマンディフェンス」だな・・・。あ、この件については再び後程・・・勿体つけ~

 えっとその次は、その遠藤さんの隣。おやおやこの人も最初の室井さんと同じことでの入院らしい、小林さん。
 もう50歳半ばは過ぎてるだろうか。小柄でかなり細身の人。なんとなく物腰が柔らかい為か、モーホーだモーホーだとみんなにからかわれていた。そうそう、なんとなく虐められやすそうなタイプと言ったら申し訳ないだろうか。

 そしてこの部屋最後の一人は、満下(みつした)さん。
 この人は整形外科的にはどのようなことで入院されているのかは今となっては忘れてしまったのだが、それ以外にも内科を受診されていた。故に同室のみんなの中ではちょっとシリアスな状態であることには間違いない。それは日を追うごとに黄疸が見られることからも明らかであった。でも、そうはいっても、この部屋の見るからに明るそうな雰囲気の中に浸っているせいか、そんな満下さんも楽しげに元気に過ごされているようだった。



 という以上が、オレのいる病室のオールスターキャストである。

 そしてオレ以外、全員寝たきり絶対安静状態

 ・・・なんとなく、ヘビーだ・・・







 つづく

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