おっさん's だいありー

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病院へ行こう!その5(2)

◆般若(はんにゃ)と乾杯♪.....

 毎度言うようだが、例の「拷問」さえなければ、これはこれでここまでは快適な入院生活であった。それまでの仕事が異様に忙し過ぎて、一ヶ月休みなし!というのが数ヶ月続いていたから、ある意味、その「拷問」を除いては(まだ言うか?何度でも言うぞ)良い骨休めになっていると言っても過言ではなかった。

 ただ、入院当初は10月下旬とはいえ、まだまだ夏の面影が残っていたときであった。まさに事故った時などは暑いくらいであった・・・それ故に足回りもライディングブーツを履くなどの装備を軽視し、丈の短いスニーカーを履いてバイクに乗った結果がこれだ・・・というくらいの当時の陽気であった。

 ところがこうして入院生活が奇しくも順調にそして時間だけが着実に過ぎていくと、病室の窓から見える風景はいくらなんでも様変わりしていく。

 目の前は大通りの「青梅街道」。
 いつもだったら”あちら側”にいるはずなのに、どうしてオレは”こちら側”にいるのだ?いやいや今が非日常なのだから”こちら側”が実際は”あちら側”で、”あちら側”が本当なら”こちら側”なのだな。・・・わけわからんくなった・・・

 とにかくだ、いつも通りなれている目の前の大通りを、まさかこんな場所から自分がぼんやりと見つめる事になろうとは夢にも思わなかった事である。

 まだ夏の空気が漂っていて、これから深まりつつある秋の頃.....どっち側だかわけわからんくなったが.....どちらか側のここに押し込められ、そして(・・・またまた言うぞ・・・)例の「拷問」に奇声をあげているその間にも月日は流れ、あれほど緑が残っていた街路樹もすっかり燃え落ちてしまい、往来の人々もすっかり耐寒装備を整えている。

 そう、そんないかにも寒そうな表の様子を温かい病室の窓からペラペラな病院着の出たちで眺めているオレ。こんなところにいていいのか?いつになったらオレもあそこへ戻れるのだろうか・・・?それどころか、オレの足は元に戻るのだろうか・・・?かなりブルーが入っているオレ・・・。もしかしたらそれは自分の前をそのまま素通りしていった「秋」に、ほんの少し柄にもなく”センチ”にさせられたのかもしれない。

 それともう一つ。
 どうしても寝たきり状態が長く、ましてや怪我した左足は一切使うことができない為、あれよあれよという間に筋肉が削げ落ちていった。ある時、「拷問」の最中に自分の左足を垣間見たとき、思わず絶句したものだ。それは、見事に筋肉がなくなり、脹脛(ふくらはぎ)など骨からブラリと垂れ下がっているのみであった。ブラブラ揺れる自分の脹脛を見つめ・・・なにか生命の危機のようなものを感じた。たかだか一週間程度寝たきりになっていただけであのように衰えてしまうものなのか?!あぁ、恐ろしや恐ろしや・・・

 そんなことなど要因はたっくさん、たっくさん!
 あぁ、まだまだ当分ブルーな日々は続くであろう・・・


 ぎゃはははははは・・・・!

 そんなブルーなオレなんかにお構いなく、相変わらずオッサン連中はパワフルだった。
 ここの病室長的存在な室井さんのパワフルさにみんなが引っ張られている感じだ。
 ベッドのカーテンなど閉めていようものなら「えーい、暗い暗い、辛気臭いわー!」と病室全てのカーテンを問答無用で開けさせる。

 このオッサン、例え寝たきり厳命の身なれど「自分でできる事は全て自分でする!」を身上としている。勿論本人はまだまだベッド上で動いてはいけない。飯を食うときにもベッドの背もたれを起こすのに何度までと角度指定まであるくらいなのだから。

 やはり不動のベッド上では「用足し」も看護婦さんの世話になるしかない。
 特に「大」の方は気が引けるというものだ。
 でも「動くな!」と言われているのだから仕方がない。
 大いに世話になろう!.....って言葉で言うのは簡単なのだが・・・
 オッサンにも乙女の恥じらいが・・・?!

 看護婦さんにカーテンを引いてもらい、大人用の紙オムツをケツの下に敷いてもらい・・・やるわけだ。で、終わると再びナースコールで看護婦さんを呼んで後始末をしてもらう。みんな言わば「まな板の上の鯉」になるわけだ。

 ん~、幸いオレはその点動き回れたからそのお世話にはならずに済んだ。もしオレだったら・・・出ないだろうな、・・・ンコ。でもそんなことは許されるはずもなく「下剤」で強制排出されるわけだ。どの道逃げようがない。

 ただこの室井さん、その「まな板の上の鯉」はまっぴらゴメンとばかりに全部自分で事を済ます。最後に用済みの紙オムツをコンパクトにまるめて、そこで初めてナースコールをし、看護婦さんにハイっとそのまるめた紙オムツを手渡すのだった。見上げたもんだぜ屋根屋のフンドシ、ってなもんだな。確かにそうだ。看護婦さんの世話にされるがままでは、ますます心身ともに入院患者になってしまう(・・・とは言え、そのものなのだが・・・)。ということからも自身でやれるところはやっていこうと心に誓ったのであった。

 ところがっ!
 「大」の方はまっぴらゴメンなのだが、「小」の方は・・・・・




尿瓶の利便性に、やめられないとまらない。


 いつしか入院生活そのものにも慣れきり、その存在の偉大さに気付く。
 そう、わざわざWCに行く面倒もなく、寝ながらにして「小用」を足せるこの快楽に思わず溺れてしまいそう・・・.。o○

 確かに失敗すると大変な事になるが、慣れてしまえばそれは御手のもの。
 逆にそんなもんに慣れてしまったオレってば、ズッポリ入院患者にハマってる?!
 だってぇ~、わざわざWC行くの、かったるいんだも~ん

 さっきの決意はどこへやら・・・


 ある時、とある看護婦さん、名前は残念ながら忘れてしまったが誰が付けたか覚えている”あだ名”は・・・・・

「般若(はんにゃ)」

 いやいや普段は全然そんなことはなく、明るくて、てきぱきと仕事もこなすし、もちろん極上の超美人系。なのに「般若」とはこれいかに?!まぁそれはここでは置いておいて・・・。

 その般若さんが丁度、”尿瓶に出揃った”頃合を見計らって病室にやってきた。



 「は~い、溜まってる人~、持っていくよ~!」



 明るく元気な般若さん。
 両手一杯に、なみなみ注がれた尿瓶びんびん♪
 おやぁ~?その光景って何かに似てるぅ~
 すると、般若さんはおもむろに叫んだ!












「へい!生一丁おまちー!!」












 あ、そうか! その色といい、泡立ちといい・・・



「あ~ぁ、これがホンマもんの生ビールだったらなぁ~」


 。。。ぼやくぼやく般若さん。
 ほんじゃぁ一丁、乾杯しますか!




 ( ^_^)/□☆□\(^_^ )カンパーイ!



 ん~、確かにまんまや・・・






 つづく

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